前回は独善的な正義感を振りかざす人について書きましたが、今回はその続編です。
続編といっても、内容的には続きものではないのでこの記事だけで完結します。
今回は、実際に私が18歳の頃に経験した正義感の強いオバサンとの出来事を中心に「正義感は強いけど周囲から疎まれてしまう人」について考えていこうと思います。
前回の記事で取り上げたテーマと似ていますが、またちょっと別の視点というか、アナザーストーリーとしてお読みください。
前回の記事はこちら↓
正義の味方は怖いし苦手!正義感が強すぎる人は人間関係に苦しむ
↑の記事の最後にこんなことを書きました↓
実は、私がまだ学生だった頃に遭遇した正義感オバサンとの素敵な(?)エピーソードを思い出したんですけど、それはまた機会があれば別の記事で書こうとかなと思います。
↑に出てくる「別の記事」というのはこの記事です。
ということで、当時18歳で慣れない一人暮らしをはじめたばかりの私と同じアパートの住人だったおばさんとのエピーソードを語ります。
先に言っておきますと、悪いのは世間知らずで無知だった当時の私です(笑)
時代はコギャル全盛期。ガングロのちょっと前ですね。
もくじ
ゴミ出しで注意されたことからご近所トラブル勃発!

当時の私は18歳の学生で、まだ一人暮らしをはじめたばかりでした。
朝、学校に行く前にまとめておいたペットボトルをアパートのゴミ捨て場に出してから、一旦部屋に戻って出かける準備をしていました。
シャワーを浴びて、化粧を済ませて、あとは戸締まりをして家を出るだけの状態が整いつつあった時、「ピンポーン!」と玄関の呼び出しチャイムが鳴りました。
「えっ!こんな朝から何だろう?」と思いながらドアを開けるとそこには、さっき私が捨てたはずのゴミ袋をもったおばさんが立っていました。
ドアを開けるなり、いきなりそのおばさんは私の前にゴミ袋を突き出して言いました。
「あのね!これあなたが出したゴミだよね?ペットボトルの捨て方なんだけど、綺麗に洗ってからラベルを剥がして、剥がしたラベルは燃えるゴミに分けて捨てて!」
「それと、ペットボトルのキャップは溜まったら私のところに持ってきて!」
私は、一応ペットボトルとキャップは分別していたんですけど、ラベルを貼ったままゴミに出そうとしていたんですね。
おばさんが言いたいことは理解できたので、とりあえずゴミは持ち帰ることにして、ラベルを剥がして今度の回収日に出すことにしました。
「あ、すみません。じゃあ、このペットボトルは今日は出さないで、次の回収日にきちんとラベルを剥がして出すようにします。ご迷惑おかけしました。」
と、一言謝って学校に行こうとしたら、今度はこのおばさん、鬼の形相でこんなことを言ってきたんです。
「はあ?そんなこと今できるでしょ?今やりなさいよ!」
声のボリュームが大きくなったおばさん、怒ってるよ・・・
正直、当時の私にはどうしておばさんがこんなに怒っているのか理解不能でした。
こうしているうちにも時間は刻々と過ぎていきます。
「あの~、これから学校に行かないといけないので、次の回収日じゃダメですか?今からやってたら遅刻してしまうんで、ごめんなさい。」
と、私が事情を説明しても、おばさんは容赦なく反論してきます。
「学校に遅刻するのは、あなたの責任よね?あなたがきちんとペットボトルを捨てなかったのが悪いでしょ!今やりなさい!10分もあればできるでしょ?」
10分もあればって簡単にいうけど、朝の10分って貴重ですよね?
とりあえず、今日はゴミを出さないで今度の回収日にきちんと捨てれば問題ないはず。
たしかに悪いのは私だけど、このおばさんの話には納得できない。
あまりに融通の効かないおばさんに私は思わずブチ切れた!
「次の回収日にちゃんと出すって言ってんだろ!それで何か問題ある?こっちも急いでんだよ!どけよ!」
声を荒らげると他の住人が異変に気づいて「どうしましたか?」と間に入ってくれました。
駆けつけた住人に事情を説明して、ゴミは次の回収日にきちんと捨てることでその場は収まったけど、結局私は学校に遅刻してしまいました。
あまりにもムカついたので、当時は友達にこの話をよくしていましたね(笑)
しかし、このおばさん、何で私が出したゴミってわかったんだろう?
見張ってたのかな?
あと、意味不明だったのが「ペットボトルのキャップは溜まったら私のところに持ってきて!」という謎の要求。
他の住人に聞いたら、これはこのおばさんが勝手に言ってるだけで、アパートの規約にもそんな条件はないとのこと。
おばさんが勝手に決めたマイルールだって。
この時から「正義のおばさん VS 世間知らずで悪者の私」という戦いが始まりました。
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ヒステリーおばさんからの個人攻撃は単なる嫌がらせ?
ペットボトル事件の後に他の住人さんと立ち話をする機会があったので、おばさんのことを聞いたらアパートの住人から疎まれていることがわかりました。
そして、驚いたのが、このおばさんはアパートの大家さんでもなければ管理人でもないという・・・。
ただの同じアパートの住人なんだって。
その後、私はペットボトルで怒られたので、飲み物は紙パックのものを買うようにしてたんですけど、ゴミ出しの時にまたおばさんに怒られました。
「紙パックは、洗ってから折りたたんでよね!」と軽く注意されただけで済んだのでホッとしましたが、このおばさんと顔を合わせるのがとにかく嫌でした。
当時よくうちに泊まりに来ていた友達にも「お金貯めて絶対に引っ越す!」って言ったましたからね。
そして、おばさんは管理人でも何でもないのに廊下やアパートの前をよく掃除していました。
先ほども書いたように私としてはできれば顔を合わせたくないんですけどね。
で、このおばさん、私を見つける度に「派手な格好をして夜遅く帰ってくるな!」だとか「部屋の外にかけてある傘が邪魔」だとか「言葉遣いがなってない!」だとか、とにかく攻撃してきます。
昔よくいた「最近の若い者は~」とボヤく年配者の典型です。(今もいるようですが・・・)
こっちがガン無視してると「ちょっと!聞いてるの?」と絡んでくるからまたウザい。
まあ、今思えば世間知らずで非常識だった私が悪いんですけどね。
怒られると思ったら意外な展開に?
ある日の夕方、私が学校から帰宅するとアパートの前をおばさんが歩いているのを発見。
おばさんはタイヤがついている買い物カートを引いて一人ノロノロとアパートに入っていきました。![]()
私は「うわー、鉢合わせかよ。最悪!」と心の中でつぶやきました。
顔を合わせたら、いつものように文句を言われると思って警戒してましたからね。
様子を見ながら、おばさんがその場から立ち去るのを待とうとしていたら、異変に気づきました。
おばさん、足を引きずっていて、アパートの階段の手すりにつかまったまま、つらそうにしている・・・
「こんばんは。大丈夫?荷物私が持ちますよ。」と声をかけると、おばさんはこっちを見て「ああ・・・あんたか?ありがとうね」と言って一瞬だけ微笑みました。
いつもの険しい表情がやさしい微笑みに変わる瞬間を見た時「へ~、この人ってこんなふうに笑うんだ」と思いました。
おばさんの荷物を運び終わって、少しだけ立ち話をした時に、病気で足が不自由だということを知りました。
このアパートにもおばさん一人で住んでいるという。
この時はじめて自分が18歳で、まだ一人暮らしに慣れていないことを話したような記憶があります。
それからおばさんは私と顔を合わせても、以前のように口うるさく文句を言ってくるようなことはなくなりました。
たまに買い物をして帰ってくるおばさんとアパートで鉢合わせると、荷物を持ってあげたりもしました。
向こうから挨拶してくることも増えて、ふと気がつくと、あんなにウザいと思っていたおばさんといつの間にか仲良くなっていました。
そして、ある晩のこと。
部屋に友達が遊びにきている時「ピンポーン!」と呼び出しチャイムが鳴って、ドアの内側にある覗き穴から外を確認するとおばさんが立っていたんですね。
私は「ちょっと騒いじゃったかな。おばさん、怒ってる?」なんて思いながら、恐る恐るドアを開けると「作りすぎちゃったみたい?よかったら食べる?お友達も一緒にどうぞ!」といってタッパーに入った料理を差し入れてくれました。(記憶が定かじゃないんだけど、たしかコロッケだったかな・・・)
後日、タッパーを洗っておばさんに返しに行こうと思ったら、ペットボトルのキャップが溜まっていたことに気がついたので一緒に持っていきました。
遊びに来ていた友達は「何アレ?アリサのお母さん?マジウケるんだけどw」なんて言ってたけど、いつの間にかおばさんは私と遭遇する度に「ちゃんとご飯食べてる?」とか「風邪が流行ってるから気をつけて」とか、私のことを心配するようになっていました。
私は子供の頃からあまり母親とうまくいってなかったので、おばさんとの関わりが少し心地良くなっていたのかもしれません。
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正義の味方は孤独なのかもしれない
入居してから2年が過ぎようとしている頃、アパートの更新が近づいているので私は引っ越しをすることにしました。
もちろん、おばさんにも挨拶に伺いました。
私がこのアパートを出ていくと聞いて、おばさんは「あら・・・寂しくなるわね。」といって一瞬だけ俯いた後、「お元気で」と微笑んでくれたのを覚えています。
私は「またペットボトルのキャップ溜まったから、あとで持ってくるね。」といって自分の部屋に戻りました。
部屋に戻ったら、なんだか私まで寂しくなってきて、いろいろ考えました。
そういえば、私、おばさんのこと何も知らなかったんですよね。
年齢は多分、50代半ばくらい?
家賃6万円代のアパートに一人暮らしってことは、他に家族はいないのかな?
相変わらず、このアパートでは私以外の他の住人には疎まれているみたい。
よくよく考えてみると、何か深い事情がありそうだけど・・・。
そんなことを考えた翌日、部屋にあったペットボトルのキャップをおばさんに持っていきました。
その時交わした会話は「あんたいくつだっけ?」と聞かれたので「この前、二十歳になったよ。」と答えただけだったけど、おばさんはどこか寂しそうだったな。
「ハタチか・・・そっかハタチか・・・」と何回かリピートするおばさん。
どこか引っかかるところもあったけど、なぜか踏み込めませんでした。
結局、おばさんのことは何も聞かずに、私は引っ越しました。
このアパートに入居した頃は、顔を合わせるのも嫌だったおばさん。
他の住人たちには嫌われていたけど、誰に頼まれたわけでもなく、ただみんなが気持ちよく暮らせるようにという思いで、階段の手すりを雑巾で拭いたり、アパートの前を掃除したりしている姿が何だか切なかったな。
正義感の強いおばさんは、ずっと孤独でした。
たまに鉢合わせた時「おばさん、おつかれ!」と、こっちから声をかけると嬉しそうだった。(いつしか口の聞き方も注意されなくなった)
この日は、ポストに入れられた不要なチラシを捨てるためにダンボールを設置したことをどこか得意気に話していました。
このアパートに住む人たちが少しでも気持ちよく暮らせるために誰に頼まれたわけでもなく、ただ一人行動するその姿は正義の味方って感じでした。
もしかしたら正義の味方は孤独なのかもしれない。
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意味不明なマイルールの謎

あのアパートを出てから数年後、勤務先でペットボトルのキャップを集めている人がいて、私は久しぶりにおばさんのことを思い出しました。
職場の人にペットボトルのキャップを集める理由を聞いて、やっと謎が解けたと思ったのですが・・・
参考
集めて支援 ペットボトルキャップを集めよう!認定NPO法人JCV
私があのアパートで暮らしていたのは90年代末頃なんですよね。
調べてみた結果、この運動が開始されたのは2005年のようです。
社会人になってからこの活動を知って、てっきりおばさんは子供たちの支援活動のためにペットボトルのキャップを集めていたものだと思い込んでいたのですが、調べてみると辻褄が合わないんですよね。
90年代後半にもこういった支援活動は行われていたのでしょうか?
せっかく謎が解明できたと思ったのに、調べてみたら謎が謎を呼ぶ結果になってしまいました。
あれは、おばさんの正義感ではなく、本当に単なるマイルールだったということなのかな?
本来だったら、おばさんの意味不明なマイルールの謎は、世界の子供たちの命を救うことにつながる支援活動だったというイイ話で完結したかったんだけど、現実はそうもいかないようです。
なかなか絵に描いた素敵なドラマのようには展開していかないものですね・・・
ちなみに私自身は、現在ペットボトルのキャップは集めていませんが、もしこの活動に興味があるなら↓のような問題をきちんと認識しておいた方が良いと思います。
約20年経った今だからわかること
あれから約20年ほど経つわけだけど、おばさんは元気かな?
時代もガラッと変わりました。
当時、世間知らずで無知だった私も今ではアラフォー。
この年になって当時はわからなかったことも、だいぶわかるようになりました。
管理人でもないおばさんは、アパートの住人がみんな気持ちよく暮らせるためにという思い(正義感)で、毎日アパートの前を掃除したり、ゴミ出しを監視したりしてたわけだけど、私の知る限り誰にも感謝されることはなかったというか、むしろ嫌わていました。私も最初は嫌いだったし。
仲良くなってきちんと向き合えば、いい人なんだけどね。
ゴミ出しの日にカラスと戦うおばさんの姿は、まるで悪の集団にたった一人で立ち向かっていく正義のヒロインだったよ。
でも、同じアパートのほとんどの住人は、そんなおばさんを「あ、またやってるよ。」程度にしか見ていなかったと思います。
正しい人が正当に評価されない理由は、やはり他人に対する働きかけ方にあるのかな?
正しさだけでは人の心はつかめないものなんだよね。
強すぎる正義感の暴走なのか、過去に何かあって屈折してしまったのか、私には詳しい事情はわからないけれど・・・
もし現在の私があのアパートに住むことになって、おばさんと再会できたら、そんな話もできそうな気がします。
正義感だけが強くて、頑固で不器用、おまけに無愛想。
そういう人を見るとおばさんのことを思い出して懐かしくなることが今でもたまにあります。
おばさん、元気でやってるかな?



